21.訳出④

今回も神田電機東京工場、プラント見学の日本語から英語への訳出です。オリジナルの日本語をよく理解して英語に通訳してみましょう。前回も少し話をしましたが、日本人であれば、音声である日本語を理解することに悩む人はほとんどいません。日英の通訳でもこの段階(音の聞き取り)はスムーズに行えますが、これをどう概念化(何を伝えるか)し、どう発話(英語という言語で)するかが、通訳の成功・失敗を決める重要な要因となってきます。

では早速、前回の宿題であった「さて、本日のプラント見学の予定ですが、お手元のスケジュールに沿って進めてまいりたいと思います」の訳出を考えてみましょう。

「~したいと思います」をそのまま英語で表現すると、 I think I want to(do) とついついやってしましがちですが、この I think I want to(do)の本来の意味は一体何でしょうか。次の英文の日本語訳を考えてみてください。

I think I want to go to Universal Studios Japan.

「ユニバーサルスタジオジャパンに行きたいと思っています」と訳してしまいそうですが、I think I want to(do)のニュアンスは、「~したいとは思っているのですが、どーでしょか、実は自分の気持ちに確信が持てません」と、自分の発言なのに、なんとも自信のない頼りない表現になってしまいます。日本人であれば、ほぼ慣習的に「~と思います」という表現をよく使いますが、したいこと、やりたいことが決まっていれば、I think は冒頭に付けないほうが英語は自然になります。ここでは I want to go to Universal Studios Japan. と表現したほうがはっきりと伝わります。

今回は、プラント見学にいらしたお客様に対して通訳をしていますので、丁寧な響きになるI’d like to (do)を使ってみましょう。

次に「お手元の」をどう表現すればいいのでしょうか。「お手元の」とは、「すでに配布されているもので皆さんがお持ちになっている」の意味ですから、provided to you などの表現で名詞であるスケジュールを後ろから修飾すれば英語らしい表現になりますね。

そして、「予定」と「スケジュール」の問題。どちらも英語で言えば schedule になるわけですが、scheduleという単語を2回も使うのはちょっとくどい感じがします。そこで、「本日の予定ですが」の日本語を「本日のプラント見学ですが」に変換して通訳してみると、

I would like to proceed with today’s tour according to the schedule provided to you.

とすっきりした英文になります。ここでも「~してまいりたいと思います」とかなり丁寧な日本語を使っていますので、I would like to (do)を使って表現しています。

次回も、日英通訳を皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

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