17.メモ取り⑤

前回は、英語の音声を聞いてメモを取る訓練をしました。ここでよく学生たちから「オリジナルが日本語のものは英語に通訳わけだから、英語でメモを取ったほうがいいのか。逆にオリジナルが英語のものは日本語に通訳するので、日本語でメモを取ったほうがいいのか」という質問がきます。皆さんは第15回、16回の音声はどちらの言語でメモを取りましたか?

通訳のメモは、あくまでも「自分が理解したことの結果」ですから、結局は自分だけが理解できればいいものなので、日本語でも英語でもどちらでも構いません。第15回、16回でサンプルのメモをご紹介していますが、和語と英語が混じっています。

これは、オリジナルの音を聞きながら、とっさに日本語から英語、または英語から日本語へと適切な訳が浮かんだものは、その言語でメモを取っていますが、聞いた段階では自然な訳が出てこないものは、オリジナルのまま、つまり英語を聞いていれば簡単な英語で、日本語を聞いていれば簡単な日本語でメモを取っているからです。そして、メモを見ながら通訳をする段階で、メモの前後を確認しながら、適切な訳を瞬時に出していくのです。

通訳のメモ取りは、オリジナルの音声を「書き取る」ことが目的ではなく、「理解すること」が目的ですから、通訳を担当している自分だけが理解できるメモでいいのです。誰かに自慢するための見た目が美しいキレイなメモを取ることが目的ではないことをしっかり覚えておいてください。

メモ取りでもうひとつ大事なスキル。それはリテンション能力(短期記憶の保持)です。メモを取りながら逐次通訳を行う際、何分にもおよぶオリジナルの発話を、通訳者は理解しながらメモを取りながら聞いています。つまり、単語だけを追っているのではなく、「話の流れ」を追いながら音を聞いてメモを取っています。この「単語だけを聞いているのではない」ことを理解できれば、上手なメモが出来上がると思います。

聞き取った内容を、記憶にとどめておくスキルを身に付ければ、学校のリスニングテスト、英検、TOEICの試験でも心の余裕が生まれてくるはずです。普段から、英語を聞くときに、単に単語だけを追って聞くのではなく、「何が話されたのか」を覚えておく訓練を積むようにしましょう。慣れてくると、自分だけのメモ用の記号や、効率的なメモの取り方が身に付くでしょう。

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