8.通訳者は日本語にウルサイ

前回のコラムでは日本語運用能力の重要性をご説明しました。「ワタシ帰国子女だから英語は問題ないので通訳者になれますぅ」という単純なものではないことを、このコラムを通してご理解いただいたのではないでしょうか。

通訳という仕事における「通訳」で最も大切なのは、「分かりやすさ」です。通訳した文章がスピーカーの使った英語の構文を正しくとらえていたとしても、スピーカーの「気持ち」を伝えることができなければ、それは良い通訳とは言えないのです。例えば、英語のquick を「速い」としか訳せない通訳者と「せかせか てきぱき きびきび 機敏な せっかち」など様々な表現力を持っている通訳者のほうが、豊かな表現が出来ることは明らかです。

心がまだまだ柔らかい皆さんには、たくさん日本語を読んでいただきたいと思います。それも純文学だけではなく、雑誌や新聞、ブログなんでも幅広く読む習慣をつけましょう。

新聞は時事用語を覚えるのに最適です。記事では、どのような日本語を使っているのか、ゆっくり声に出して日本語を読んでみましょう。普段つけっぱなしのテレビから聞き流していたニュースの日本語をしっかり自分の言葉にすることが大切です。小説をたくさん読めば、気持ちを細かく言い分ける表現がいかに日本語は発達しているかがわかり、日本語での素晴らしい表現力が身に付きます。また、雑誌やブログなどでは、流行りの日本語を知ることができます。流行り廃りがあるのは否めませんが、その時代をズバリ的確に表現している日本語を学べます。

余談ではありますが、英語では「・・・と彼が言った」「・・・と彼女は言った」と誰のセリフであるかを明らかにする必要がありますが、日本の落語では、ト書きを入れなくも、旦那のセリフか、おかみさんのセリフかが耳で聞いただけで分かります。それだけ日本語は表現力が豊かな言語なのです。

これだけ言葉が発達している日本語を今一度確かめてみましょう。その作業すべてが、あなたが将来「良い通訳」をする上でゆるぎない土台となってくれるのです。さあ、今日から日本語を声にだして読んでみましょう。

さて、この「声に出す」ことの必要性ですが、通訳者は当たり前ですが、自分の声で訳を出します。声の大きさ、抑揚、話すスピードなどを意識しなければなりません。オリジナルの英語がピリオドで終わっているのであれば、通訳者の表現もポーズを置いて意味の区切りを伝えることが必要です。先ほど落語の話をしましたが、「間の取り方」も大切です。「間抜け」とは、もともと芸能の世界においてあるべき「間」がないことを指摘する言葉です。聞き手の心をとらえるような話し方(デリバリー)が身に付くように、たくさんの日本語を声にだして読んでみましょう。可能であればその日本語を誰かに聞いてもらうとさらに「伝わったかどうか」がわかると思います。

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