6.通訳者の語彙力

通訳業務中の通訳者の頭の中(その1)。シンプルに説明すれば、スピーカーの話す英語、または日本語を、通訳者は頭の中で理解し別の言語へ置き換えて、聞き手に伝える。誰もが想像できるこの一連の流れを図で表すと、以下のようになります。

スピーカー → 通訳者 → 聞き手

「こんな単純な作業だったら自分でもできるワ」って思うでしょ?で、そー思ったそこのアナタ、以下の日本語を声に出して読んだ後、間を置かず、すぐに英語に通訳してみてください。(日英)。

1.4月の酒税法改正によってビールの定義が変わり、店頭には、果実、果皮なども原料に入れた、これまでにない香りや味のビールが並んでいます。

2.スマホが普及した現代、若者からお年寄りまで、さまざまな写真を撮影し、その場でSNSなどに投稿することも多いが、居場所や持ち物などを公開することで、犯罪の被害に遭う恐れもある。

3.山菜採りをしていた80歳代の無職男性がクマに襲われ、顔面や腹部などを負傷、その後病院に搬送されたが、命に別条はなかった。

いかがですか?ぜーんぜん英語が口から出てこなかったでしょ。「酒税法」って英語で何?果実はfruitだとしても「果皮」って英語で何?スマホは問題なく英語で表現できるけど、「居場所」って英語で何?クマは英語に直せる語彙だけど、「山菜取り」って英語で何?「命に別状はない」ってニュースでよく聞くけど英語で何?…と、まず語彙が出てこなかったと思います。

上の図に戻りましょう。スピーカーが話した1~3の日本語を通訳者は瞬時に英語に変換していきます。なぜそれが可能になるのか?英語の組み立て方などの問題は別にして、豊富な語彙のデータベースを通訳者は自分の頭の中に持っているからなのです。

確かな語彙力こそが通訳者の商売道具だとすると、日ごろから語彙の習得には手を抜かずやり続けるしかありません。皆さんに上の1~3の日本文をすぐに英文に変換することができなかったとしても、語彙だけは辞書を調べれば英語が出てきます。「この日本語は英語で何て言うんだろうか」と常日頃から言葉にアンテナを張っておくのも大事な心構えです。

そして、せっかく調べた語彙は、自分だけの単語ノートを作成して書き残しておきましょう。電子辞書は持ち運びやすくとても便利に語彙を検索できますが、紙の辞書に比べて記憶には残りません。苦労して調べた語彙ほど記憶に残りやすいものなので、自分で工夫しながら、あなただけの単語ノートを作成しましょう。

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