20.翻訳の世界で生きる

今回でこの翻訳コラムも終了です。最後のご挨拶をする前に、まずは前回課題のサンプル字幕を確認しておきましょう。皆さんはどのような字幕を付けましたか?

Katy:(5文字)何してるの?
Naomi:(10文字)この瞬間を覚えてたい
Katy:(21文字) ナオミ 6年間もここに通ってるのに?
Naomi:(10文字)アシスタントとしてね
(18文字)ライターとしての初心を忘れたくない
Katy:(9文字) 友人の大事な日なの
(12文字) ナオミ 本当にうれしいわ
Naomi: (9文字) ありがとう 夢みたい

テレビの世界はとかく派手で楽しそうに感じます。映像翻訳もきっと楽しい作業だろうと考える人も多いと思いますが、世の中、理想は必ず現実が清算するものです。一見華やかに見える世界であればあるほど、その舞台裏は過酷なものなのです。映像翻訳の世界もまったく同じです。映像翻訳業界大手『日本映像翻訳アカデミー』は映像翻訳を「多様化する海外映像素材を他言語化して、不特定多数の視聴者に伝えるための技術」と定義しています。

前回、「海外ドラマや映画が好きだから」の話をしましたが、この「多様化する」が真に伝えているのは、「映像であれば何でも当てはまる」ということで、劇場公開映画、ドラマ、アニメ、ニュース、ショップチャンネル、スポーツ中継、ドキュメンタリー、ビデオゲーム、美術館での映像、工場視察や企業PR映像など、ありとあらゆる映像を翻訳することになります。「海外ドラマだけを翻訳したい」なんて考えている人にはまったく向いていません。

次に「不特定多数の視聴者」ですが、子供向けの海外アニメのセリフを吹き替え翻訳する際は、当然お茶の間でその日本語版アニメを観る子供たちが理解できる日本語での吹き替えを作成しなければなりません。漢字オンパレードの日経新聞に出そうな言葉を選択しても子どもたちには理解できず、結果そのアニメを楽しむこともできなくなります。

また、法定ドラマ、医療ドラマなどの字幕翻訳を付ける場合、ストーリーに出てくる専門用語をきちんと調べ上げ、かつ字幕の字数制限を考えて日本語を練らなければなりません。つまり、映像翻訳を目指すのであれば、どんなジャンルであろうと、吹き替えと字幕の両方ができなければ仕事にはならないということです。何事も「好きだから」という気持ちは大前提ですが、「好き」以上の根性とプロ意識がないと、どのタイプであれ翻訳の学習も仕事も続かないのです。

短い翻訳コラムでしたが、少しでも翻訳の世界を体感できたのであれば、これほど嬉しいことはありません。最後までお付き合い下さり、本当にありがとうございました。

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