19.映像翻訳デビュー

字幕作成のテクニック面での注意点を幾つかご紹介しておきます。「?」「!」「…」などは字数には数えません。「っ」などの促音は0.5文字とします。「?」や「!」は文章の終わりにつけて感情を表すことができますが、字幕翻訳の場合、そのシーンや登場人物の表情から十分に雰囲気が伝わっている場合は、わざわざ使う必要はありません。「、」「。」などの句読点は字幕には使いません。代わりにスペースを使って文の区切りを表します。ひらがなばかりを並べると非常に読みにくいので漢字やカタカナ表記(登場人物のイメージを崩さないように注意しましょう)また字幕を改行して見せる場合は、不自然な文章の切り方は避けましょう。

では早速、字幕翻訳に挑戦してみましょう。ドラマの設定を説明します。入社して6年目のNaomiはファッション雑誌の出版社でこれまでずっとアシスタントの仕事をしてきました。やっと物書きとしての実力を認められ、ついに一人前のライターとして出社する日がきました。いつものように仲良しの友人Katyと二人で出社してきましたが、入り口で急に立ち止まり、ビルを見上げています。各英語のセリフの横にある文字数内で字幕を完成させてください。

Katy: What are you doing?
(5文字)
Naomi: Nothing. I just want to remember this moment.
(10文字)
Katy: You know, Naomi, you’ve been working through the same building, like for six years, right?
(21文字)
Naomi: Yeah, as an assistant. This is a totally different.
(10文字)
I just want to remember walking through this building as a writer of this magazine.
(18文字)
“Here’s looking at you, kid.”

もちろん、Naomiにとっては大事なスタートの日ですが、早くオフィスに入りたい他の社員たちが「お前たち早く入れよ!」と後ろから急かしてきます。それに対してKatyが一言。

Katy: Hey! Excuse me! My friend is having a moment!
(9文字)
Naomi, I am so happy for you and incredibly proud of you.
(8文字)
Naomi: Thank you! I still can’t believe that it is really happening.
(9文字)

たったこれだけのセリフですが、文字数の制限内で訳文を考えるのは非常に大変なことがわかりますよね。劇場公開用であれば2時間分くらいのセリフがあるわけですから、とてつもない集中力と、その作品の世界にどっぷりつかる覚悟がないと最後まで気力も体力も持ちません。次回サンプル字幕をご紹介します。お楽しみに!

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