17.映像翻訳とは

子どもの頃、「奥様は魔女」というアメリカのテレビドラマを観ながら、主人公のサマンサはペラペラと日本語を話している!とびっくり感動したものです。今から思えば俳優の口の動きに声優が声の演技を完全に合わせるリップシンクのクオリティが当時から相当高かったのだなと思います。

さて、現代では衛星放送、ケーブルテレビ、また、Hulu、Netflix、Amazonプライムなどネットによる動画配信により、世界中の映像コンテンツを自宅にいながら気軽に大量に楽しめる時代となりました。この「気軽に大量に」を可能としてくれているのが、皆さんが目にする「日本語字幕」であり、耳にする「日本語吹き替え」である「映像翻訳」です。「海外ドラマや映画が好きで英語も好きだから」と映像翻訳の世界に憧れを持つ人も多いと思いますが、プロとしてやっていくには相当のスキルと覚悟が必要です。今回は「映像翻訳とはどういうものか」を考えてみましょう。

海外で制作された映像コンテンツから日本語の吹き替えや字幕を作る作業が、映像翻訳の仕事です。映像コンテンツは、主に日本語版制作会社と呼ばれるところで字幕や吹き替えが付けられ、映像翻訳者はこれらの日本語制作会社から翻訳の依頼を受けます。仕事の形態としては、制作会社社員として翻訳する場合もありますが、在宅フリーランスで翻訳するのがほとんどです。字幕の場合は、字幕制作ソフトの使用が求められ操作スキルも身に付けなければなりません。さて、映像翻訳のジャンルですが、

吹き替え:英語などの外国語の音声の代わりに、日本語のセリフを声優が演じる手法。翻訳者としては「登場人物の口の動きに合わせた分かりやすい日本語」を作成する技術が必要で、声優さんがアフレコ(音声収録)の際に使用する日本語台本を作成することも含まれます。

字幕:英語などの外国語の音声を流したまま、画面上に日本語字幕を表示させる手法。日本人が1秒で認識できる日本語の文字数は4文字が限界とされており、セリフ1秒に対して4文字の日本語で表現、一度に表示する字幕は2行まで、というルールがあります。翻訳者としては、限られた文字数の中で作品の流れを崩すことなく、日本語を読んでいることを忘れさせるような字幕を考えなければなりません。

ボイスオーバー:英語などの外国語の音声をかすかに流したまま、日本語の音声を同時に流す手法。通訳者が行うCNNの日本での放送版や、ドキュメンタリー、インタビュー、また証言フィルムなどで多く用いられ、翻訳者はその原稿を作成します。

海外ドラマや映画のエンドクレジットで「日本語版制作チーム」の紹介があり、翻訳を担当した人の名前が何人か出てきますが、日本語版製作は基本チームで行う仕事なので、吹き替えであれ字幕であれ、映像翻訳者は仕事の流れを理解し、翻訳を進めなければなりません。

報酬ですが、翻訳するジャンルや制作サイドの都合にもよりますが、ほとんどの場合コンテンツの長さで決まります。だいたい10分あたりで計算され、相場は8,000円~数万円程度です。ただし、とにかく経験を積みたいから「タダでもいいから翻訳させて欲しい」という人も多く、フリーランスになって初年度の収入が100万にならない翻訳者も実はたくさんいます。

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