10.カタカナの意味

渡辺直美の記事に戻りましょう。以下の英文を翻訳してみてください。

In this country of overwhelmingly thin women, most fashionable stores don’t even stock sizes above M, and Watanabe is challenging deeply ingrained perceptions about body image.

2行目のandまでの訳は、「ものすごく細い女性のこの国で、ほとんどのおしゃれな店はMより大きいサイズをストックしてない」となります。ここでのポイントは、andの次にある動詞のchallengeをどう日本語に訳すかということです。challengeという英単語は、「チャレンジ」というカタカナで日本語に入り込んでいますから、ついつい「チャレンジする」という訳を出してしまいます。しかし、日本語の「チャレンジする」と英語の動詞であるchallengeは同等の語義を持つのでしょうか。例えば、「私は先週、東京マラソンにチャレンジした」という日本語を英語で言うと、

Last weekend, I challenged the Tokyo Marathon.

になるのでしょうか。

実は英語のchallengeは「挑戦へ誘いかける 物事の事実・正当性に立ち向かう」という語義があります。従って以下のような使い方が正しい英語となります。

The marathon challenged the runners.

「そのマラソンは参加者には試練だった」

We challenged them to a game of doubles.

「私たちは、彼らにダブルスの試合を申し込んだ」

渡辺直美の記事にあるWatanabe is challenging deeply ingrained perceptions about body image.の訳は、「ワタナベは、体のイメージについて深く浸透してる認識にチャレンジしている」という訳ではなく、「ワタナベは、体のイメージについて深く浸透してる認識に挑んでいる」という訳にしたほうが、オリジナルの意味を正確に伝えていることになります。

では次の英文のmindsはどう訳せばいいのでしょうか。「マインド」というカタカナが日本語にありますから、「心」と訳してもいいのでしょうか。

“But rather than trying to change other people’s minds, I would like to help change the minds of bigger women, to help them feel good about themselves.”

日本語では、「考えるところ」と「感じるところ」が一体のものとなっており、両方とも「心」で表現します。「心で考える」「心で感じる」という日本語があることからもわかりますよね。しかし、英語では「考えるところ」と「感じるところ」は別のもので、知性・思考・理性はmindという語彙で表現します。従って、「でも、他の人たちの考えを変える努力をするよりも、大きい女性たちの考えを変える手助けをしたいと思ってます。彼女たちが自分自身のことをよく思えるように手助けをしたいと。」と訳すとオリジナルの意味を正確に表現することが出来ます。

普段何の疑問もなく使っているカタカナの言葉には十分注意して、英語の語義を考えた翻訳を作成するように心がけましょう。

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