6.日本語の面白さ

翻訳者を目指す心構えが出来たところで、早速翻訳レッスンに入りましょう。まずは、以下の会話文を日本語に翻訳してみてください。設定は友達同士の会話としておきましょう。

A: What do you want to eat?

B: I want to have a hamburger and French fries.

この会話文を学生たちに翻訳させると、ほとんどの学生が、

A:あなたは何を食べたいですか?

B:私はハンバーガーとフライドポテトが食べたいです。

という、日本語を学習している外国人が話しているような不自然さが残る日本語訳に仕上げてしまいます。もちろん、この学生たちの訳文は、オリジナルの英語の文法も語彙も正しく捉えており、間違いは見られません。しかし、この訳文を読んだ皆さんはなんかヘンだなと思うはずです。
「なんかヘンだな」とはつまり、自然な日本語になっていないということです。

皆さんは、落語を聞いたことがありますか?最近は若い人の間で落語ブームらしく浅草演芸ホールなどもたくさんのファンで賑わっているようです。さて、その落語。皆さんは落語を理解するのに、じっと耳を澄まして話を追うことなんてすることなしに、すんなり理解して笑えますよね。もはや当たり前すぎて考えたりしないことですが、実は「・・・とタケちゃんが言った」「・・・とおばあさんが言った」というようなト書きを入れなくても落語は成立していることに気付いていましたか。そんなの当然でしょーと思うかもしれませんが、落語のセリフをそのまま英語に翻訳しても、英語ではト書きなしに話が成立することはありません。それはなぜか。

ただセリフを並べていく落語でも、どれが子どものセリフか、おばあさんのセリフか、どれが社長のセリフか、どれが不良少年のセリフかすぐに理解できてしまうのは、男言葉、女言葉のみならず自分の役割に応じた言葉遣いが日本語はとても発達しているからなのです。この日本語の特徴を最大限に生かした落語はそういう点でもすばらしい芸術と言えるでしょう。

上記の英文は「友人同士の設定」としましたね。友達同士であればどのような話し方をするでしょうか。

A:何食べたいの?

B:ハンバーガーとフレンチフライ。

と翻訳したほうが日本語としては自然だし、「友達同士の設定」だけで、男か女かは設定していませんでした。男同士であれば、

A:何喰う?

って日本語訳もあり得ますね。

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