4.翻訳の現場

オリジナル作品への強い愛情が何よりも大切である、と繰り返しお話ししてきました。プロの純文学翻訳者は、一冊の本を約半年で仕上げなくてはならないこともあり、作品への愛情がないと、最後まで体力気力を保持することは難しいでしょう。さて、翻訳者として実際に仕事をする場合、どのようなプロセスがあるのでしょうか。

1. 納期を決める

クライアント(翻訳依頼者)やコーディネーター(自分が所属している翻訳会社のスタッフ)から原文を受け取ると、まず、納期を確認します。第3巻まで続くような大作であれば、比較的長めに納期が設定されますが、時事問題やビジネスニュースなど旬な内容のものは納期が大変短く、正確性も求められます。自分がどこまでの時間を依頼された翻訳に割けるのかをよく考えます。仕事を引き受けたら、必ず納期を守らなければなりません。

2. 翻訳作業

原文を深いレベルで理解するために、資料を集めたり、その筋の専門家から話を伺ったり、自分で現場に足を運んで感覚を掴んだりして、出せる手はすべて出し切って翻訳作業に取り掛かります。調べればわかるものを調べないような手抜きをすると二度と翻訳者として使ってはもらえません。また、翻訳作業を滞りなく行うための翻訳環境を整えることも欠かせません。パソコンで翻訳を仕上げ、Eメールでクライアントやコーディネーターとやり取りするわけですから、自分が自由に使えるパソコンは必需品です。

3. 翻訳チェック

翻訳者が訳した文章を、そのままクライアントに納品することはありません。必ずチェックが入ります。翻訳チェックのことをproofreadingと言いますが、翻訳者の訳した文章を複数の人が読んで校正していきます。校正はチェックとブラッシュアップに分けられ、語訳のチェックと、さらに良い文章に磨きをかけるブラッシュアップが行われます。以前、私がチェッカーとして働いていた職場では「バリ1さん」「バリ2さん」とチェッカー同士を呼んでいましたが、これはvalidation(確認)の略称です。

4. 完成・納品

修正された翻訳作品を、クライアントに納品します。昔は郵送でしたが、最近ではEメールに添付して送る方が主流になりました。

 5. 翻訳者の辞書 へ >
▲page top